浄土真宗本願寺 福岡教区

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みんなの法話

福山智昭 下川東組 明行寺

「祖父母や父母が仏壇に手を合わせる姿が、子どもの仏縁となる時代は終わる」というお話を聞き、総務省の統計調査を開いてみた。戦後すぐの頃は、日本の世帯人数は平均5人だったのに対し、現在(2019年)は2.2人を割っている。ということは、ご仏縁に遇うキッカケも「各家庭」から「個」へとシフトせざるを得ないのではないだろうか。

そんなことを考えていた時に、SNS(Twitter)上で『ぶっカフェ!』という仏教漫画があることを知った。宗派の異なる3人の僧侶と、失敗ばかりのアルバイターの女の子が、カフェを営む4コマ漫画である。

登場するキャラクターの一人ひとりが、自分や他人の悩みと向き合い、そこに仏教の言葉が寄り添う。そんな作品が、日々更新を待つ読者の支えとなっている。同時に、作者の小林ロクさんは、ファンからの応援に励まされながら、物語を紡いでいる。SNSならではの、おかげさまの心が通うコミュニティ。ここにも、御同朋、御同行の姿があった。

ひょんなことから、小林ロクさんご本人にお話を伺う機会を得た。 「自分の家の宗派も知らなかった私が、漫画を創作する中で仏法に出遇い、仏教にまつわるお話を描くことになるなんて本当に不思議です。道元禅師の『明珠在掌(=本当に大切なものは、すでに自分のなかにある)』や、蓮如上人の御文章、白骨の章『朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり(=死は隣り合わせにある、生きていることはご縁の積み重ね)』という御教えは、今を生きる私へのメッセージですね」

人の数だけ仏様とのお出遇いがある。そして私自身、御念仏のよろこびをお伝えする僧侶である前に、南無阿弥陀仏をたまわる一人なのだ、と改めて知らされた。

従来の仏事における仏法の継承は難しくなっているかもしれない。しかし姿や形は変わっても、阿弥陀様のお慈悲のあたたかさをいただくご縁は、今もこうして私に開かれている。

一人居て喜ばは二人と思ふべし、二人居て喜ばは三人と思うべし、その一人は親鸞なり。

我なくも法は尽きまじ和歌の浦 あをくさ人のあらんかぎりは

(御臨末の御書 弘長二歳十一月 愚禿 親鸞 満九十歳)

称名

『ぶっカフェ!』/ 小林ロク
https://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/buddhacafe/