浄土真宗本願寺 福岡教区

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みんなの法話

川崎 文丸  本願寺派布教使 怡土組 長楽寺

4月22日、わたしは親戚のお寺の『住職継職法要・親鸞聖人750回大遠忌法要』にお参りしました。前日の夕方からはこの春台風なみの突風が吹きまくって、稚児のおねりができるだろうかと心配しました。しかし夜が明けるころには風もおさまり、雨もあがって法要は予定どおりに稚児のおねりから始まり、無事に終了しました。

 

出勤のご法中(僧侶)は全員が七条袈裟(しちじょうげさ)を着用。このお袈裟は本願寺派では礼装のときに用いる一番大きなお袈裟です。それぞれ違った図柄模様で、色とりどりの美しい糸が織り込まれ、それぞれがとてもあでやかで、華やかなことでした。その袈裟に大きな紐の修多羅(しゅたら)を取り付けて七条袈裟が完成するわけです。

 

法要を終えて、控室で七条袈裟を畳んでいると、いっそう身じかにその艶やかさが目にとまったことでした。

 

ところで、わたしたちから見ている七条袈裟のあでやかな図柄模様は実は横糸なのです。横糸に色彩を加えて、一本ずつならべてあでやかな図柄ができているのです。わたしたちが見ている衣服の図柄もすべて横糸なのです。不思議なことにその横糸を引っ張る縦糸は目には見えません。見えている横糸は見えない縦糸でしっかりと支えられ秩序が保たれて図柄を見せているわけです。

 

ところが一旦その縦糸が切れると一瞬にして横糸はばらばらになって落ちてしまうのです。

 

ともすると、わたしたちは美しく、あでやかなのは横糸がしっかりしているからだと思ってはいないでしょうか。美しいもの、あでやかなものに目を奪われて、それをしっかりと支えているものを見失ってはいけないよといわんばかりに大きな紐の修多羅が目にとまったことでした。

 

案外、本当は見えているものよりもそれ以上に見えないものでわたしどもは支えられているのだなあと思いを巡らして帰路についたことでした。永代経の時節でもあります。

 

合 掌