浄土真宗本願寺 福岡教区

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みんなの法話

志摩田真生 本願寺派布教使 福岡組正法寺

嬉しいことや楽しいことは、そんなに親しくない方とでも話すことができるような気がします。ですが、悲しいことや苦しいことになると、なかなかそうはいきません。そんな思いを話す相手や場所を、私たちは持っているでしょうか?

私が住職を務めている正法寺では、毎月月末、夜8時から「涙活」という行事を行っています。

一般で行われる涙活は、意識的に泣くことでストレス解消を図る活動です。感動する映像や文章を見たり聞いたりすることで、積極的に涙を流してスッキリしよう、というものです。それをヒントに、お寺で行うにあたり少し方向を修正しました。

葬儀やその後の法事に関わる中で、悲しくても中々その思いを出す場所がないと感じることが何度もありました。「しっかりしなさい」「いつまでも泣いていてはいけない」と言われ、思いを包み隠して過ごしている方が多いのかもしれません。せめて、我慢せずに泣ける場所があれば、それだけで人は救われていくのではないだろうか?そんな思いを持ち続けていました。それは何より、私自身が泣きたくてどうしようもない気持ちを抱え続けているからでもあります。

正法寺の涙活は、外陣の照明を消して内陣の灯りだけで勤行する、ただそれだけの時間です。その間、それぞれの抱える「悲しみ」と向き合う時間にしていただきます。泣いても、泣かなくても大丈夫なんです。ただ、「私と同じように、泣きたい思いを抱えている隣の人なんだ」との寄り添う気持ちがあれば、安心して身を委ねていくことができます。勤行が終わってからは、参加者とお茶を飲みながら雑談する時間になっています。

「たった一人でも、この一時間だけでも、誰かの支えとなれるのであれば」、その思いを大切に、続けていくつもりです。

 

以 上