浄土真宗本願寺 福岡教区

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みんなの法話

和田出 本願寺派布教使 怡土組 妙休寺

去年の秋のこと、風もだんだん冷たさが増し、木々も赤く色づきはじめていました。大人たちは口数も減り、口を開いたと思えば「ああ寒っ」「おお寒っ」とばかりです。

そんな中でもとびきり元気なのが我が家の小学校2年生の娘です。毎日学校から帰ってくると、「ただいまー!」と大きな声を響かせ、おかえりの声も待たずに「遊びにいってきまーす!」と玄関にすべての荷物を投げ出し走り去っていきます。

そんなある日のこと、私がお参りから帰ってくると、娘が外遊びから帰ってきたところのようでした。「ただいま」と玄関を上がり少し歩くと、廊下に赤く色づいた葉が数枚落ちています。

こういうことをするのは娘しかいません。どんな遊びをしたのかわかりませんが、葉っぱで遊んでそのまま持って帰ってきてしまったのでしょう。(その辺に投げるんではなくて、ちゃんとゴミ箱に捨ててほしいよ。)そんな事を思いながら「何でこんなところにゴミがあるとー!捨てとくよー!」と声をかけると、家の奥の方から、扉越しで少しこもった娘の声が聞こえます「ダメ―!それ秋の宝物―!」と。あ、秋の宝物!?

私がただの枯葉で必要ではないものだと勝手に思っていたものは、なんとなんと、娘にとっては綺麗に赤く色づいた秋の宝物でした。聞けば、学校で「秋の宝物を見つけよう」という授業があったそうです。

秋には秋にしかないものがある。それは秋にしかないから、貴重な宝物なんだよ。と教わったようでした。2年生の娘に大切な事を教えてもらいました。

すると、少し自分に目を向けてみますと、私たち自身はどうでしょうか。私にも私にしかない宝物があるでしょうか。社会の中で、他者と比較しながら生きてしまう私たちはなかなか自分にしかない宝物、見つけにくいのかもしれません。

しかし阿弥陀如来さまから見れば、あなたにはあなたにしかないものばかりです。声、姿、心、どこをとってもあなたにしかないものでありますから、あなた自身が大切な宝物なんです。

仏さまは、世界にたった一人のあなたが、何にも比べられない一番大切な宝物だとおっしゃいます。一番大切だからこそ、南無阿弥陀仏というお念仏、声の仏さまとなって私たちの命をご一緒くださっています。どうぞ、これから寒さ厳しくなる中「ああ寒っ」と声が出ても、その後「なまんだぶ」と称えてみてください。寒いけれども阿弥陀さまはいつでもあったかい。心がホッと暖まることでしょう。なまんだぶ。なまんだぶ。