浄土真宗本願寺 福岡教区

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みんなの法話

渡邉崇之 本願寺派布教使 夜須組 淨覚寺

「ひとりで生きていくって、こんなにもつらいことなのですね…」

 

お連れあいを亡くされた、ある女性の言葉です。お釈迦さまは、私たちのいのちの事実を「人生は苦なり」と告げられました。「苦」とは〈ままならない・思い通りにならない〉という意味です。出会いと別れの毎日、その折々に、苦しみをこらえ、悲しみをごまかし、眠れぬ夜をひとりで過ごしてしか生きていけない存在。それが私たちのいのちの事実です。

 

私どもはいつも、幸福を求めては、その心で《よりよき未来の物語》をこしらえ描いているようです。病まないように、老いてしまわないようになど、さまざまに手に入れたものを手放さないように励みます。そればかりではありません。愛おしいものと別れないように、会いたくないものと出会わないようにと出来る限りの工夫もいたします。

 

ただ、その求める《よりよき未来の物語》は、時として私どもの心を転じさせます。用心を重ねればこそ、病となれば深く悩み、愛おしさが深いほど、その別れは私をどん底へと突き落とします。

 

やはり私どもは時に涙し、時に眠れぬ夜を過ごさなければならないようです。しかし、そんな私だからこそ、阿弥陀さまの大きなお慈悲が「われにまかせよ 必ず救う」と、今ココに満ちておられるのであります。人知れぬ涙を流し、もがき嘆く私だからこそ、愛や憎しみ苦悩を超えて「ナンマンダブツ」と入り満ちておいでなのです。

 

いま、私どもの口からこぼれる「ナンマンダブツ」は、「われにまかせよ 必ず救う」阿弥陀さまのお慈悲いっぱいの言葉。

 

あなたが大事、あなたが大切と、阿弥陀さまがご一緒でありました。