まいごのこねこちゃん(2024年7月)
小栗 洋慶 本願寺派布教使 大分教区 宇佐組 妙満寺
大分県竹田市出身の童謡作家・佐藤義美さん。その名前をご存知なくても、童謡「犬のおまわりさん」を全く聞いたことがない人は少ないでしょう。「まいごのまいごのこねこちゃん〜」というこの歌は日本の歌百選に選ばれるほど愛唱される童謡の一つです。佐藤さんの故郷には、彼の内弟子で佐藤氏を献身的に支えた童話作家の稗田宰子さんによって佐藤義美記念館が建てられ、稗田さんは名誉館長を務められました。
佐藤義美さんは生前に「迷子の迷子の子猫ちゃんって言うけども、人間もみんな迷子じゃないのかな」とつぶやかれたことを稗田さんが伝えていると、記念館で教えてもらったのですが、初めてこの歌の持つ深い精神性に気付かされました。
「人間もみんな迷子」
他人事ではなく、この私もオギャーと生まれてきた時は名前もお家もわからない、泣いてばかりいる私であったのです。両親や家族のおかげで成長して当たり前のように生きてきただけのことです。何にも知らずに泣いてばかりいた日のこともすっかり忘れて生きています。
迷子の子猫ちゃんの前には親切な犬のおまわりさんがやってきて、ニャンニャンニャニャーンと泣いてばかりいる子猫ちゃんのためにカラスやスズメにまで「この子のお家はどこですか?」と訊いてくれましたが、分かりません。
私共にはありがたいことにお釈迦さまや親鸞さま、蓮如さまがお浄土からいらしてくださって、私に代わって阿弥陀さまに訊いてくださったのです。阿弥陀さまは「この子は、私・阿弥陀の子。仏の子は仏の国に帰るんだよ」といのちの迷子の私を、迷子にさせないおはたらきをお示しくださいます。
「南無阿弥陀仏ー安心しなさい、まかせなさい。私の国に帰るんだよ、お浄土に生まれていくんだよ」と呼びかけつづけてくださる阿弥陀さまのお声に安心して、聞き惚れつつ、この人生を過ごさせていただきます。
なもあみだぶつ