「お念仏 称える人生」(2025年12月)
河野一声 本願寺派布教使 福岡教区 東筑組 昭然寺
私のお寺では、ご法事を勤める際、最初に「お焼香の作法」を皆さんに説明しています。そして、読経の途中、順にお焼香をしてもらいます。
まず、焼香卓の前で一礼、その後、お香をひとつまみし、そのまま香炉にくべます。そして合掌、「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」とお念仏を称え礼拝、最後に今一度、正面に向かって一礼をして、自席に戻ります。これが、浄土真宗本願寺派の「お焼香の作法」です。お香は二度・三度くべず一度だけ、またお香は額に押し頂かずそのままくべるということも、補足としてお話しします。非常にシンプルな作法ですので、最初に説明をすると、初めての方も皆さん、作法通りお焼香をしてくれます。
ただ、1点だけ気になるところもあります。お香をくべ、合掌する。ここまでは良いのですが、そのあと「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」と、声に出してお念仏を称えるということが、案外難しいようです。普段、お参りをする機会の少ない方はなおさらです。きっと、小さい声で、または心の中でということかもしれません。しかし、そのような方にはご法事の後、「大きな声で称える必要はありませんし、回数にも決まりは有りませんから、是非、声に出してお念仏してください」とお話しています。もしかしたら、「しつこいお坊さんだ」と思われているかもしれません。
なぜ私がそこまでしつこく言うのかというと、浄土真宗は「お念仏を称える」ということをとても大切にする宗教だからです。浄土真宗という教えは、すべてのものを必ず救うという阿弥陀様のお心を聞き、口にお念仏を称えていく。「南無阿弥陀仏」とお念仏を称えるということは、決して呪文を唱えているわけではありません。お念仏を称えるということは、阿弥陀様がご一緒の人生を歩ませていただくということです。つらいこと、苦しいことの多い人生かもしれませんが、お念仏称える人生は、決してひとり孤独に歩んでいく人生ではありません。阿弥陀様がご一緒の人生です。そして、いのち終わるときにも、その阿弥陀様に抱かれて、私たち一人ひとりが「極楽浄土」というところに生まれて往って、仏さまに成らせていただく。これが浄土真宗という宗教なのです。
是非皆さんにも、お念仏称える人生、阿弥陀様がご一緒の人生を歩んでいただきたいと思います。なかなか一人では難しいという方は、どうぞ近くのお寺にお参りください。阿弥陀様のあたたかなお慈悲のお心を聞くことが出来ます。そして、一緒にお念仏称える仲間がきっと出来ます。